2021年7月 – その2:Pingdemic (ピンデミック)でイギリスは人手不足!

ピンデミック!(Pingdemic)

 

7月も半ばになるとデルタ異変種の感染者数とワクチン接種完了者の数が同時に増えていった。ワクチン接種完了者は、7月20日頃までに1回目のワクチンが人口の約70%、2回目が約55%くらいまでになったようだ。

しかし、それとは別に増えていっているものが…!

それはコロナウィルス感染者と濃厚接触してNHSのTrack&Traceアプリから「Self-isolation」(自己隔離)してください、というお知らせを受けた人の数。

自己隔離は10日間と決められていて、このお知らせが届くと同時に「隔離が終わるまであとXX日」というようなカウントダウンがアプリに表示され始める。

(アプリのカウントダウンについて詳しくは「2021年1月-その2」を。→https://elsaleo.hatenablog.com/entry/2021/01/31/000000_1

 

私の勤務先でも7月に入ると、このNHSのアプリからお知らせを受けて、隔離のためお休みしている人が増えてきた。

家族の誰かに陽性反応が出た人や、ロックダウンが解除されてきたのも手伝って出かけることが多くなったので、どこかのパブやレストランですれ違った人が陽性だったり、というケースが多い。

会社で「しばらく会ってないなぁ~。ホリデーかしら?」と思っていた人が隔離中、ということも多々。

 

このアプリから隔離をするようお知らせが来ることを意味する新しい言葉ができた。

それは、「Ping!」。

携帯にメッセージが来る時に鳴る「ピーン!」という音から来ている。

この「Ping」は動詞としても使われていて、例えば「I have been pinged!」

(NHSアプリから隔離するようメッセージがきたよ!) というように使われている。

7月半ばまでに「Ping」された人はイングランドだけでも50万人にも登るとニュースで取り上げられていた。

そして、この「Ping」という言葉とコロナのパンデミックを文字って、「Ping」された人が急上昇してきたこの現象を「Pingdemic」というようになった。

(こんな時になぜか、駄洒落?)

 

この頃から、あちこちで人手不足がめだってきた。

特に深刻なのは病院。

NHSの医療スタッフの多くは、コロナ陽性反応者と職業柄接することが多いので、明らかに「Ping」された人が多い。

コロナウィルスが蔓延し始めてからNHSはずっと人手不足だというのに、このPingによって多くの医療スタッフが隔離しているため、予定していた手術が以前にも増してもキャンセルされることになったと。

 

病院以外で問題になっているのはスーパー。

スーパーのスタッフも店内で不特定多数の人と接するためか、多くの人が「Ping」されて人手不足に陥っている。

老舗のマークス&スペンサーでは棚をストックする人が不足してるため、閉店時間を早める店舗もでてきたとニュースにでていた。

私はこのニュースを見て「ふーん、こんなところにも影響がねぇ。」と、結構ひとごとのように捉えていた。

しかしその次の週末、近所の大手スーパー、テスコに食料買出しに行ってみると…。

棚にないものがたくさん!

  • バナナは1本も棚にない!
  • いつも買う種類のハムもない!(2-3種類くらいしか残っていない)
  • 毎週買って我が家にストックするチキンのもも肉もない!
  • いつも買う低脂肪の牛ミンチ肉もない!
  • 冷凍食品の棚も1部カラっぽ!
  • スナックの棚も品薄気味
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肉類の棚は品薄気味
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左:バナナ売り場の棚にはバナナが1本もない

右:冷凍食品の1部は全く空っぽ

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スナック売り場の棚も補充されてないところがあちこちに...。

 

「これか!ニュースで言っていたことは!」

人手不足がこんな身近なところにも迫っていたとは..。

食料はあっても、それを配達するドライバーや、棚に並べる人が隔離中で、店内まで届くのに遅れがでてるケースが多いらしい。

「食料は十分にあるので、パニック買いをする必要はありません。」と、消費者に向けてスーパーからメッセージも発信されていた。

ロックダウン開始時に起きたことから学んでいるではないか!

スーパーや病院などの大きな組織だけでなく、もっと小さなビジネスでもスタッフが隔離中で仕事が回ってないところがたくさんでてきた。

 

実は我が家も、今月この人手不足の影響を受けた。

以前から、1階の壁の塗装部分が粉っぽくなって剥がれているところが数箇所でてきたので、業者さんに見にきてもらったところ、防湿材を壁に注入することを勧められた。

この作業に3日ほどかかるのと、作業中は壁を削ったりして粉が舞うので、できればどこかに避難してる方がいいとアドバイスされたので、夫と相談し、この作業中はホリデーを兼ねてレスター市から車で2時間弱ほどの所にあるピーク・ディストリクト国立公園という所にコテージを借りて3泊することにした。

出発の前の日は、作業中に家具などが粉やホコリまみれにならないように、あちこちビニールのシートで覆うという準備をし、出発当日は飼い猫2匹をキャタリーに預けにいった。

「これで準備万端!あとは帰ってきたら、ビニールのカバーを外して、掃除機をかけるくらいで済みそう!」と思い、家の鍵を近所に住む義父に託して出発。

 

私たちの泊まったコテージ近辺は、電波の繋がりが超悪く、電波の繋がる場所に移動した時に、義父に電話して「ちゃんと業者さんが鍵を朝一に取りにきた?」と、作業開始予定日の午後聞いてみた。

すると「まだ来てないよ!」という返事が…。

夫が今度は業者さんに電話してみたところ、「申し訳ないのですが、今日からお宅で作業する予定になっていたスタッフがコロナに感染したため、行けなくなりました。

他のスタッフも隔離中の者がいて、手が空いてる作業員がいないので延期させてください。」と言うではないか!!

何でも業者さんから夫の携帯に朝いちで連絡を入れようとしてくれてたらしいのだが、電波が通じなかったので連絡できなかったらしい。

「こんなシチュエーションでは電波の繋がるところにホリデーに行くんだった!」と後悔…。

とにかく来れなくなったと聞いて私は、

「ええ~!せっかくこの作業日程に合わせてコテージも借りて、猫も預けたというのに!?」と叫んでしまった。

この作業予定にに合わせて念入りな計画をたてたけれど、こればかりは、誰も責めることはできない。

「壁のことはあきらめて、せっかく来たからホリデーを楽しもう!」ということになった。

 

このように、スタッフが隔離中のため業務が滞ってたり人手不足になっているという話を頻繁に耳にするようになった。

恐らく、迅速テストやPCR検査が頻繁に行われているのも、このPingされる人の増加に貢献していると思う。

大量のテストキットが簡単に手に入るようになったおかげで、コロナウィルスの感染者が多く検出されるのはいいとして、ロックダウンの規制が緩和された後、多くの人が他の人と接触する機会も増えた。

幸いワクチンの接種完了者が増えたので、症状が出てる人や重病になる人は少なくなったものの、感染者と接触したため隔離は今まで通りしなくてはならない。

ということで、最近は「ワクチンの接種が完了してれば、感染者と濃厚接触しても隔離をしなくてもいいのでは?」という意見もでてきた。

 

ロックダウンの規制がなくなったと思いきや、今度は隔離ブームで人手不足になろうとは!

私の当面の心配は「バナナとチキンのもも肉はいつ棚に置いてくれるの~?」だ。

 

追記:

7月下旬には、社会を回すために必要な業種に携わる人たちは「Ping」されてもワクチンを2回接種していれば隔離をしなくてよいことになった。

その中の例としては、食料供給に携わる人、医療関係者、交通機関、製造業、エネルギーや水道関係、緊急サービス等が含まれる。