2月 その1:娘の誕生日とGeneration COVID(COVID世代)
娘の誕生日とGeneration COVID
2月5日は娘の22歳の誕生日だった。
ロックダウン中なので、もちろんパーティーも外食もなければ、友達とダンスクラブへ行ったりパブに飲みに行って祝うこともない。
友達やボーイフレンドと過ごす時間が一番楽しいこの時期に、娘は残念ながら実家で親と一緒に過ごしている。
昨年の誕生日は、私たちに会っている時間すらないくらい多忙なソーシャルライフを娘は送っていた。
大学の友人たちと皆で飲みに出かけ、ダンスクラブで明け方まだ踊ったあと、次の日は電車に乗ってマンチェスターにいる友達に会いに行き、一緒にコンサートへ。そして翌日はボーイフレンドとレスターで待ち合わせて電車でロンドン北部にあるルートン空港まで行き前泊し、次の日のフライトでアイスランドへ3泊4日の旅行にでかけたんだった。
「今思うと、あれはウソみたいな人生だったわ…。」
「ああ~、それに比べ今年はソーシャルライフ…ゼロ! はぁ~。」
とため息をつきながら、このロックダウン中に覚えた編み物をしながらつぶやいていた。
去年の今頃はおしゃれして、メイクもばっちりして、ダンスフロアで友人達やボーイフレンドと濃厚接触しながら踊っていたのに、今年はほぼパジャマに近いルームウェア、もちろんメイクなんてなしで、Netflixのドラマシリーズを見ながらせっせと編みものに励んでいる。
「考えてみると、ダンスクラブではみんな薄着で露出度の高い服をきて、汗が飛び散る
中、汗だか飲み物だかわからないけどベトベトの床の上で踊ってたんだねぇ~。今じゃ考えられない!」と、すっかり1年で基準が変わってしまった。
もし1年前の娘に「踊りに行くなら2メートルのソーシャルディスタンス忘れないでね」なんて言ったとしたら、「はぁ?なんじゃそりゃ?」ってことになっただろう。
あれから1年、ソーシャルディスタンスはすっかり「New normality - 新しい普通」になってしまった。
知り合いに会ったら挨拶としてハグやキスをするイギリス人でも躊躇するようになった。
息子と娘も、おばあちゃんやおじいちゃんに会う時ですら、いつものハグとキスは避け、肘と肘をつき合わせながら「ハロ~!」と言ったり、3歩下がったところから手を振ったりしている。
親族ですらこんな感じなので、知らない人や初対面の人とお近づきになるなんてほぼ「ない」に等しい。
そしてふと「今までデートアプリで交際相手を探してたシングルの若者たちはどうしてるのかしら~?」と思った。
こんな時期だから、もしマッチする人が見つかってもデートで行くような所は全部閉まってるし…。
そういえばクリスマス前に会社の同僚たちと世間話をしていた時、独身の同僚が、「しばらくはガールフレンド探しやデートもお預けだぁ…。」と話していた。
私のような家族もちの人は、ロックダウン中に家に篭っていても寂しいと思う時間もないくらいだけど、一人暮らしの若い独身者の人達にとっては、人と交わることなく一人で家に篭るのは寂しさ極まりないに違いない。
このパンデミック中に一人暮らしを止めて、実家に戻る人が多く出てきているというのも納得。
私の友人の息子さんも、都会で一人暮らしをしながら働いていたが、パンデミック中にリモートワークが可能になったため、「それなら家賃のかからない実家で!」と5年ぶりに実家に帰ってきた。
かく言う我が家の娘と息子も…。
二人が大学に進学した時は「ああ~、これで子供たち巣立っちゃったね..。」
「大学卒業したらそのままどこかで就職していなくなっちゃうだろうから、これからは二人暮らしだぁ~。」
「じゃ、子供もいなくなると夫婦の会話も減るだろうから、子供の代わりに猫でも飼おっか!」などと夫と話し2匹の猫も飼い始めたんだった。
それが、二人が卒業した頃この世の中はコロナ真っ只中で就職難がきていた。
結局「そのままどこかで就職」はなくなってしまい、二人とも家に戻ってきて、我が家は家族4人+猫2匹、と大学進学前より人口密度が高くなってしまった。
息子と娘も卒業したらやりたいと思っていたことができず、最初は「ああ~、これからが人生の始まりだったのに残念。」と思っていたが、最近はアルバイトしながら家に居るのも心地よくなってきたようだ。
本当に巣立つことができる日はくるのだろうか??
このように、「New Normality (新しい普通)」の状況の中、恋愛、就職、暮らし等いろんな面で人生が一時停止してしまった若者たちのことをCOVID Generation(COVID世代)と言うらしい。
今年は家で親の私たちと誕生日を過ごすことになったこのCOVID世代の娘のために、ダイニングルームをパーティー会場のように飾り付けて、わずかながら気分を盛り上げようと試みた。
幸い娘の好きなケーキ屋さんは、ロックダウン中お店は閉まっているけれど、オンラインで事前注文すれば、ケーキを作ってくれ受け取りにいけるシステムになっていたので、大きなケーキを注文して、皆で味わって食べた。
「娘よ、ロックダウン中の誕生日おめでどう~!」
そうえいば今月はバレンタインデーの月。
スーパーには赤いバラの花束が海のように並んでいた。
ロックダウン中でデートにも行けない、ロマンチックな食事にも行けない、とCOVID世代には、「ないないずくしのバレンタインデー」だけど、お花の売れ行きはどうだったのかな…。
ちなみに我が家は、1月にコロナに感染して1ヶ月間隔離している間にカレンダーの日付やイベントが夫の頭の中から抹消されてたのか、夫からは何も届かなかった。(花もチョコレートも!) 私もCOVID世代の仲間入りだぁ…。(笑)
今週の悲しいニュース
昨年4月に100歳を迎え、募金を募るために庭を歩き続けたたあのキャプテン・トムさんがコロナにより2月2日に亡くなった...。募金は最終的には3千万ポンドを超えたとか。
100歳にしてロックダウン真っ只中の国民に感銘を与えてくれたトムさん、どうか安らかに。ご冥福をお祈りしています。