12月 - その4 国境閉鎖でサラダ不足の危機? / どうなるBrexit...
国境が閉鎖するとサラダ不足の危機がやってくる?
コロナウィルスの異変種拡散を防ぐため、ロンドンとイングランド南東部の警戒レベルが「ティア4」に上がり、クリスマスルールも強化されるという発表があった翌日、ヨーロッパの国々がUKとの国境を閉鎖した。
オランダ、ベルギー、イタリア、オーストリアはUKからのフライトを禁止し、海を挟んで隣国のフランスは、空路、海路とも国境を12月20日から48時間の予定で閉鎖した。
EU諸国とUKとの輸出入は主にこのフランスが陸路の経路になっていて、毎日万単位のトラックがドーバー海峡を渡っている。
私の勤務先でも、ヨーロッパ諸国にある代理店に商品を毎日のように送っていて、急ぎでない場合はFedexやDHL,TNTなどのトラック便(陸路)サービスを使っている。
エアー便だとたいていのEU諸国には翌日到着、トラック便でも中1日(2日)で到着する。
しかし、この突然のフランスの国境閉鎖により、あっという間にUK-EU間の陸路の物流が止まってしまった。しかもヨーロッパの国々がクリスマス休暇に入る直前に!
私の勤務先は12月23日が仕事収めで、今年は24日~年明け1月3日までがクリスマス休暇。大半のヨーロッパの客先も同じようなスケジュールになっていた。
というわけで、今年中にヨーロッパの代理店に商品を発送するには12月21日が最終日だと頭の中にあった。
が!この突然の国境閉鎖のため、年内に発送することは不可能になってしまった。
「国境閉鎖のため、商品の発送は年明けになります。」というような内容のメールを急遽各代理店に送ることに…。
このようなメール対応などで月曜の朝からバタバタしていると、同僚が「今朝のニュース見た?国境が閉鎖したから、ヨーロッパからの野菜が届かなくなって、クリスマス~年末にかけて野菜不足になる予測が出てるって、特にサラダ関係!」
「今朝、念のために通勤途中にあるコンビニスーパーに寄ってみたけど、サラダ類がもうすでになかったよ!!」と教えてくれた。
「ええ~!それ困る!だって、クリスマスディナーにサラダは不要だけど、いつも夜はあっさりとしたもの食べたくなるし、それにサラダ類は冷蔵庫に常備しておきたいアイテムだし..!」
その日の朝の出勤前、BBCのニュースで野菜の卸市場からレポーターが実況中継しているシーンが出ていたのだが、私はドライヤーで髪の毛を乾かしながら見ていたので、うかつにもよく内容を聞いてなかった…。
私はこの同僚からの情報を聞いて、慌ててネットのニュースを検索してみた。
すると..! まだ夜も明けないくらいの早朝からスーパーに長蛇の列ができてる画像がでてきたではないか!
「ひぇ~!みんなはやっ!」
私の脳裏には、春のロックダウン前に起きたトイレットペーパー、ハンドソープ、小麦粉類の買占め騒動で空っぽになったスーパーの棚のイメージがフラッシュバックで戻ってきた。
「またかい!? はぁ~…。」と私は大きなため息をついた。
でも今回不足すると予測されているサラダ類は生ものなので、トイレットペーパーやハンドソープと違って日持ちがしない。いくら今たくさん買い占めたとしても、クリスマスまでは日持ちするとして、年末までは無理では?
私はクリスマスの食事に必要な生鮮野菜類の食材の買出しは、仕事収めの23日に行こうと思っていたが、ちょっと心配になってきた。
日持ちはしないかもしれないけど、全く冷蔵庫にキープする野菜が無くなるよりはあったほうが安心だ。
私は家で仕事をしている夫に会社からメッセージを送った。
「野菜不足になるから今日テスコ(スーパー)に行って、トマトとかレタスがあったら多めに買っておいて!」
「ニュースで見たら野菜売り場の棚が空になってるみたいだから!」とも。
2時間後、夫からメッセージが返ってきた。
「パニックする必要はないよ。まだたくさんトマトとレタスあったから。」
「いやいや、ちょっと安心してないで、その見かけたトマトとレタス買っておいてくれた?」
もう私はこんな緊急事態に落ち着いてる夫に余計ハラハラしてきた。
実際に野菜売り場に居ないので、実情が見えなく余計不安だ。
「大丈夫、ちゃんと買ったよ。」
「あ~、よかったこれでクリスマス休暇中にサラダが食べれる!」
私はやっとほっとした。
サラダ類は何とかゲットすることができたが、21日になっても義父のためにオーダーしたプレゼントが届いていなかったのが気になっていた。
前の週に「クリスマス前に届きます」とわざわざ明記してあるインテリア用品ネットで注文していた。
1-3日以内に届かない商品は、UK外(特にEU諸国)の国から届くことが多い。
「Despatched (発送しました)」のメッセージは注文してすぐに来たのに、それ以降
音沙汰がなかった。
結局23日まで待っても届かなかったので、クリスマスまでに間に合うよう夫と一緒に代替品を買いに行くことになった。
「きっと注文した品は国境閉鎖で止まっているトラックの中だね…。」
と夫と話していた通り、年末まで届かなかった。
クリスマスまでに届かなかったプレゼントよりも、もっと悲惨なのは、国境が突然閉鎖されたため、ドーバー海峡を渡れず足止めされたトラックの運転手さんたちだ。
TVのニュースではフェリーの港のあるドーバーや、ユーロトンネル(車ごと乗れる列車)のターミナルのあるフォークストンに続く幹線道路が何キロにも渡ってトラックで埋め尽くされている様子が映っていた。
3千台近くのトラックの運転手さんのPCR検査が終わった後も、クリスマスイブまでUKを出れなかったトラックも多くあったようだった。
「運転手さんたち、クリスマスまでには家に帰れますように…。」と祈った。
予定通り23日にクリスマス用の食料の買出しにスーパーへ行ってみると、野菜もたくさんありほっと一安心。2日前はパニック買いで列ができていたシーンがニュースに出ていたのに、店内はいつものクリスマスの時期に比べてぜんぜん混んでなかったのが以外なほどだった。
「ひょっとして、もう皆クリスマスの食料確保は済ませてるのか?」と思うほど。
「しかし、あのパニックはいったい…?」
私は山のように積まれた野菜を見ながら、「いつも野菜を運んできてくれるトラックの運転手さん、ありがとう!」と初めて野菜に向かって感謝した。
クリスマス休暇中は、多めに買った野菜をたくさん食べて過ごさねば…。
そういえば…! Brexit協定交渉はどうなってる?
11月のロックダウン、12月の異変種発生で新たな警戒レベル(Tier 4)の発令、EUとの国境閉鎖、と次から次にいろんな事が起こり、すっかり忘れそうになっていたEUとのBrexit*協定交渉…。 (*Brexit = BritainがEUをExitするの略語)
前任のメイ首相の時からずっと交渉が難航していたこの通商協定を結ぶ期限が、気がつけばすぐそこに!
今年の始め、1月31日にUKはEUから正式に離脱しているのだが、通商協定等いろいろな取り決きめに合意する間の約1年は、移行期間ということで交渉が続けられていた。
この移行期間の期限は今年の12月31日になってたので、本来なら今年はこのBrexitの協定合意がどうなるかに焦点が当てられれるはずだった。
しかし2020年になったとたんにコロナ一色になり、Brexitのニュースはいったいどこへ?と思っている間に気づけばもう期限直前。
ここまで交渉が難航していたので、「もうこれはNo deal(合意なし)になるかもね..。」と会社でも同僚たちと心配し始めていた。
私の勤務先では取引先がヨーロッパ諸国なので、No Dealだと特に関税の面ですぐに影響がでてくる。
またEU間では人も物も動きに制限がなく(Free movement)、今まで商品をEU諸国に送る際は何もつけずに送れたのだが、移行期間が終わると通関用の書類(コマーシャル・インボイス)を作成して添付する必要がでてくるし、そこに記載する内容も細かい。
もうすぐクリスマス休暇だというのに何も決まってなくて、「年明けたらどうなってるのかしら~?」
「コロナ規制といい、Brexit Dealといい、見通しがつかないことばかり!」
「こりゃ年が明けて出社したとたんにバタバタしそうだね…。」
とすでに年明けのことを心配しながら、同僚たちとため息をついていた。
結局クリスマス直前の12月24日に通商協定が無事合意された。
輸出入に関する関税はDuty Freeとなったようだ。
とりあえず、年明けに仕事に行く時には輸出入業務に関する対応をどうするかがわかっただけでもよかった。
しかし、このBrexitで増えるのはペーパーワークばかり…。☹