ロックダウン4週間前 (2月24日~3月1日頃) -コロナ嵐の始まり
2月末にストーム・デニスが去ったかと思いきや、今度はコロナウィルスのニュースが世界のあちこちから次から次に流れてきた。
今年の2月25日(火)はUKのパンケーキデーだった。
「Shrove Tuesday」と言うイースターサンデーの47日前の火曜日に断食に入る前に卵や油を使い切るためにパンケーキを焼いてたべたというクリスチャンの伝統行事から由来しているらしい。
毎年このパンケーキデーの2週間くらい前からどのスーパーでもパンケーキの材料売り場コーナーができて、パンケーキ用の小麦粉、卵、シロップ、レモン等をまとめて1箇所に置くようなる。
イギリスのパンケーキは日本のホットケーキとは違って、もっと薄い。
どちらかというとクレープに近い。
普通、この薄いパンケーキにバターを塗り、お砂糖をふったりレモン汁をたらしてして食べる。ジャムを塗る人も。
この日も会社に着いてPCをオンにした後、朝のお茶を作りにキッチンへ行った。
過去数年ほど、会社のお掃除をしてくれている東欧出身のおばさんが、スタッフ全員にキッチンでパンケーキを焼いてくれていた。
キッチンに行くとこのおばさんがいたので、「今年もパンケーキ焼いてくれるの?」と聞いてみた。
「うーん、今年はめんどくさくなったから焼かないけどいい?」
「ノープロブレム、大変だもんね~!」というような会話をしながら、ちょっと残念な気持ちでキッチンのTVを眺めていた。
ちょうどお湯のでる蛇口とティーバッグやコーヒーの置いてあるカウンターの上の壁にTVが掛かってるので、お茶を作りに行くたびにニュースが目に入る。
コーヒーをスプーンでまぜながら私の隣でニュースを見ていた同僚が、「イランの保健相がコロナ陽性反応だってー!」と教えてくれた。
「ええ!保健相が?イランの?」「保健相と言えば国民の健康に一番注意を注がないといけない人だよね..?」
TVには数日前にその保健相がコロナについて語っている際、汗をふきながらスピーチしているビデオが流れていた。
「うわぁ~、もうこの時から危なそうだったんだねー。周りの人たちは大丈夫なのかな..。」と心配しながらもアジアで蔓延しているコロナが、中東にも広がってるのがなぜか不思議だった。それもイランだけ飛びぬけて?
それとコロナで死亡者が多数出始めたイタリア北部の地域が都市閉鎖(ロックダウン)に入ったというニュースもこの頃流れていた。
ロックダウンに入った地域Lombardyには、先週トレーニングに来てくれたイタリアの代理店のあるミラノも入っている。取引先の会社の人たち大丈夫かしら?
相変わらずEメールがイタリアの代理店から届いていたので、ロックダウン中でも会社は営業しているのかな…。
「ニュースでロックダウン中って聞いたけど、皆さんだいじょうぶ?」といつもコンタクトをとっているイタリアの代理店の人に聞いてみた。
「皆大丈夫よ。今のところオフィスの中で作業可能で、自宅で働く人もでてきたけど、会社から出て客先訪問するのは禁止になったの。」と言っていた。
「ロックダウンしている地域内しか移動はできないの」とも。
ついこの間までサッカーの試合で盛り上がっていたり、観光客でいつも賑わっていたミラノの街がロックダウン..。 それも知ってる人たちが住んだり働いている街で。
いつもやりとりしている人たちの安否も心配だが、取引先の会社、しかもイタリアはヨーロッパの中でかなり大きい市場を占めているので、その会社が活動停止になることによる影響もかなり大きくなる事が予想できた。 なんだか他人事ではなくなってきた…!
同じ週、日本では翌週月曜日から全国の学校を閉鎖するというニュースがでていた。
「ついに日本も…? もうすぐ学期末や入試試験のシーズンの大事な時なのに大変だよね..。」とまた同僚たちと話していた。
日本にいる私の妹には中学生の娘がいる。
このニュースの後スカイプで話した時、「学校休みになって嬉しい~!」と喜んでいた。
「お友達に会えなくなって寂しくない?」と聞くと「別に~。ラインでメッセージ送ったりビデオコールできるし!」という返事。
「そうだよね~。最近は便利な世の中!」とおばさんくさいコメントを返した。
友達と直に会えなくても画面を通じて会える世の中。
そういえばうちの子供たちも友達と隣同士に座りながら、DSを通して会話してたこともあったけ..。隣に座ってるのにDSのスクリーンを通して会話しているところを見て「コミュニケーションのはかり方も変わったもんだな~」と思っていたんだった。
最近の子供たちは別に家に篭っていてもそんなに苦にならないのかもしれない…。
そういう私も家に篭っていても苦にならないと思った。
食料さえ調達できて、ドラマ見放題のNetflixされあれば!
週の半ばになると、Public Health England(英国公衆衛生庁)から出された勧告をもとに会社では総務からコロナに関する以下のような内容の一斉メールが送られてきた。
- 2月19日以降下記の特別地域から帰ってきた人はコロナの症状がでていなくても
111(NHSの電話アドバイスサービス)に電話し自己隔離すること。
- イラン
- 北イタリアのロックダウンされた地域
- 韓国の特別ケアゾーン
- 中国のHubei(湖北省)
- 2月19日以降下記の地域から戻ってきた人で、どんなに軽症であろうともコロナ感染の症状がある人はすぐに111に電話し自己隔離すること。症状がない場合は自己隔離しなくてもよい。
- イタリア北部(ピサ、フローレンス、リミニは除く)
- ベトナム
- カンボジア
- ラオス
- ミャンマー
- 国内、海外とも出張は基本的に控えること。またどうしても必要な場合は社長の許可を得ること。
- くしゃみ、咳をする場合は口をティッシュで覆い、すぐにティッシュをゴミ箱に捨てること
- gov.uk/coronavirus を参考に衛生管理に気をつけること。
くしゃみと咳をする際ティッシュを使用するキャンペーンに「Catch it, Kill it, Bin it!」
(取って、殺して、ゴミ箱に捨てて!)というキャッチフレーズがポスターや新聞の広告に現れ始めた。語呂合わせをよく考えたキャッチフレーズだなと関心!
普段からハンカチを持ち歩いたりマスクをする習慣のないイギリス人、このフレーズで習慣ずいてくれるかな…。
それにしてもこのようなメールが社内で回ってくるようになってきて、事態が深刻化してきた事が身近に感じられるようになった。
パンケーキデーの日は仕事の帰りにスーパーに寄ってレモンと卵を買って帰った。
小麦粉は家に常備してあるし毎日使うものではないので、棚にたくさん並んでる小麦粉を見ながら、「今日は買わなくてもいいか!」とパスした。
後から「しまった!あのパンケーキデーの日に小麦粉を買っておくべきだった。」と後悔することになろうとは!
夕食の後のデザート代わりにパンケーキを食べてると、義理の妹から携帯にメッセージがきた。5月に予約していた義父との地中海クルーズをキャンセルする事にしたらしい。
色んな国でコロナが深刻化してきたニュースが出始めていたので親族の皆で心配してるところだった。一生に一度はクルーズに行きたかったという義父は残念そうだったけれど、二人の安全のため、キャンセルしたと聞いて皆で胸をなでおろした。
後日ニュースで全世界の40隻近くのクルーズ船でコロナ感染者がでて、最寄の港から寄航を拒否された船も何十隻もあったと聞いて、この時の義妹の判断は正しかったと思った。
コロナが落ち着いたらまた予約し直せることを励みに義父には元気でいてもらわねば!