ロックダウン5週間前 (2月17日~2月23日頃) – 嵐の前の嵐

スティーブ ウォルシュ氏のニュースもやっと下火になった頃、今度はまたUKに大きな嵐がやって来て、前回大被害がでた所と同じくイギリス西部とウェールズ一帯で大洪水が発生した。

前回の被害から完全に立ち直る前に再度強風で家が崩壊したり、かなり多くの地域で家々や農場が浸水したりで、ニュースをみていて同僚たちと心を痛めていた。

イングランド中西部のシュロプシャーというところに「Iron Bridge (アイアンブリッジ)」という世界初の鉄の橋(世界遺産)が渓谷の上に掛かっているのだが、下を流れている川の水面がもう橋の真下まできている画像がニュースに流れていた。

数年前そこを訪れた事があるが、橋は川の水面からかなり上に掛かっていたような..。

かなりの雨量だったことが想像できた。

「どうか、橋が流されませんように」とまた祈りたい気持ちになった。

 

今回の嵐はストーム・デニスという名前がつけられた。

コロナ対策、ストーム・デニスのの被害対策と政府は対策に追われてばかりだ。

2月も半ばになり、ようやく日に日に日照時間が伸びてきたというのに、外はこの嵐と雨で一向に明るくならない。毎日どんよりと暗い雲が立ち込めている。

 

こんな暗いどんよりした毎日の中、私は5時半起き、1時間強の車通勤をしていつもの通り仕事に行っていた。私の勤務先はイギリス中部にあるので、洪水等嵐の影響はそれほどなかったけれど、外は暗く雨がずっと降ったり止んだりしてい通勤の運転も快適ではなかった。

水はけの悪い高速道路ではドライブというよりサーフィンをしているかのような感じだった。もちろんワイパーは最高速にセットしたままでないと、しぶきでよく前が見えない!

私の勤める会社はヨーロッパ各国にある代理店を通してある商品を卸していている。

今年、私の部署ではこのヨーロッパの代理店のスタッフを対象に1年を通して、毎月アフターサービスのトレーニングを行う計画を立てていた。

この週は今年第一回目のトレーニングを実施することになっていて、前々から資料を作成したり、参加者のホテルを手配したりと準備を進めていた。

今年1年を通して参加してもらう人たちのスケジュールを約20件ほどある代理店の担当者たちとやりとりして、やっと確定したところだった。

今回参加してくれるのは、フランス、イタリア、スロベニア、ポーランド、ロシア、デンマーク、トルコ、ハンガリーの代理店の人たちだ。

参加者が到着すると、何人かの人たちは、外の暗い空を指差しながら「典型的なUKの天気だね!」と冗談をとばしていた。

 

4日間のトレーニング中は一緒にランチや夕食もとって、普段Eメールや電話では話さない世間話やお互いの上司についての冗談などたわいな会話で盛り上がったりしていた。

今回参加した人たちのうち何人かは、来月(3月)のトレーニングコースにも参加する予定になっていたので最終日には「See you next month!(じゃあまた来月!)」と言って解散した。

この時コロナはまだヨーロッパで感染者が出始めたものの、それほど拡散してなかった。

来月までには収束してる期待度の方が高く、トレーニングも予定通り開催されると皆思っていた。 まさかこの人たちと次に会えるのがいつになるかわからない状況になるとはこの時だれも想像していたなかった。 

今思うとこのトレーニングが終わった後くらいから事態は急速に悪化していった。

ストームデニスはまさしくコロナの嵐が来る前の嵐だったのかも!

 

この頃コロナはまだアジア地域で大発生していて半分他人事だったのでヨーロッパ内では下記ののようなスポーツイベントも毎日のように行われTVで放映されていた。

  • シックス・ネーションのグビーの試合(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、イタリア、フランスの6カ国で行われるトーナメント)
  • プレミアリーグのサッカーの試合
  • チャンピオンズリーグのサッカーの試合(ヨーロッパ内のサッカーチーム対抗戦)
  • スヌーカー(ビリヤードよりも大きなテーブルでおこなう玉突きのゲーム)

私の夫や息子もこの週「チャンピオンズ・リーグ」の試合に見入っていた。2月19日にはスペインのバレンシアVSイタリアのベルガモのチーム、アタランタの試合がミラノのスタジアムから放映されていた。

スペインから3000人ほどのファンがミラノに移動したようで、試合が終わったあとミラノの街やバーで盛り上がってる様子のTVに映っていた。

このイベントがイタリア北部とスペインでコロナ拡散の滑車となったことを後で知った。 バレンシアのチームの選手やコーチの約3分の1の人たちが感染していたらしい!

 

後日、「どうしてイタリア北部に感染者や死亡者が集中しているか」という記事をいくつか日本のネットのニュースで読んだ。

イタリアに滞在した経験のある人たちが「イタリア人は家族や友人と集まって食事の時間を長くとるから」とか「イタリア人は挨拶にキスやハグをよくするから」という解説をしていたが、どれも的を得てないと思っていた。

ベルガモ地域で死亡者数が飛びぬけて多い理由の説明になっていない。

「きっとこのチャンピオンズ・リーグの試合の事は日本で伝えられてないのかもしれない」と思った。

そしてこういう事実はもっと日本でも流れて欲しいと思った。

これを教訓に一刻も早く今計画されている大イベントを中止しないと!と。

夏に日本で行われる予定のオリンピックも!

この時点ではまだ東京オリンピックの延期の話はでてなかった。