9月 – その3 ピーク・ディストリクト国立公園へGO!


Thor’s Cave(ソーの洞窟)をめざして出発!ー
久しぶりの遠出

9月になると、今まで10時近くまで明るかったイギリスの夏も終わり、どんどん日が短くなってきた。幸いお天気がいい日が続いていたのが救いだ。

前回(9月-その2)にも書いた通り、9月後半からイギリスはコロナウィルス対策の規制が色々とかかり始めて、みなホリデーや遠出をするのを控えていた。

9月の最後の週末もお天気がよく、「今年はあと何回行けるかわからないから、今のうちに!」と言いながら我が家の夫と息子は近所のゴルフ場に出かけていった。

行けるところも限られてきたので、身近なところで「お出かけ気分」を味わうしかない!

 

「男子がゴルフに行くなら、私たちもどこかに行く? お天気いいし近くの森に散歩とか?」と娘に問いかけると、

「じゃ、ずっと行ってみたかったピーク・ディストリクトにあるこの洞窟に行きたい!」と言って、携帯で検索した写真を見せられた。

それは洞窟の内側から外の景色を撮った写真で、楕円形をした洞窟の入り口を通して見える青々とした丘の景色だった。

「ああ~、綺麗!でもいったいピーク・ディストリクトのどの辺かしら~?」

ピーク・ディストリクトはイングランドの中部から北部にかけてまたがる大きな国立公園で、風光明媚な丘や谷がたくさんある、約1500平方キロメートルほどの地域。

夏はウォーキングやキャンプをする人たちに人気だ。またベイクウェル・タルトという有名なお菓子(タルト)の発祥地であるベイクウェルという小さな街があったり、もっと奥に行くとミネラルウォーターで有名なBuxton(バクストン)という、昔はスパーがあって療養に来る人たちで栄えた街もある。

この大きな国立公園に指定されている一帯には風光明媚な丘や谷の他に、石灰石でできた洞窟もたくさんある。

ということで、娘が見せてくれた写真だけではこの広大なエリアのどこにこの洞穴があるかわからない。

 

同じような洞窟をネットで検索していくと、「Thor’s Cave」(ソーの洞窟)とでてきた。

何でもネットで調べられる便利な世の中!

今度はGoogleマップでこの「Thor’s Cave」を検索してみた。

「おお~!ピークディストリクトの一番南の方だから、思ったより近いかも!」

我が家のあるレスター市からピークディストリクトの北部までだと、マンチェスターに近いので3時間ほどかかってしまうけれど、ダービーシャーのある南部の方までだと1時間強で行けるはず。

ルート検索してみると所要時間1時間30分程とでてきた。

「ここなら日帰りで行けそうだね~!」

ということで、午前中に出発することにした。

ついでに近くに住んでいる姪っ子2人にも声をかけてみた。

彼女たちも最近どこにも遠出してないので、この週末は退屈していたのかすぐに

「We are coming!(私たちも行くよ~!)」と即答が返ってきた。

女子4人(1人はおばさん)で洞窟めざしてレッツゴー!

 

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めざす洞窟まではレスター市から1時間半ほど

目的の洞窟に一番近い村の名前「Wetton」をナビに入れて出発した。

ピークディストリクトの南部の入り口、ダービーシャーまでは幹線道路を通ってさっと45分くら行けるのだが、その先はだんだん田舎道になってきた。

途中のどかな感じの村々を通って進んでいった後、とつぜんナビが「次を左」と言ってきた。曲がり角らしいものが見えなかったので突然の指示に不意をつかれてしまった。

「えええ~!曲がるところがない!」といいながら、曲がり角を通過してしまった。

ちょっと先でUターンしてもう一度反対側からみてみると、畑の真ん中に1本の細い道があった。

「ええ?ここ車で通れるのぉ??」

「もし対向車が来たらどうする?」

と皆で怪しさ満載、恐る恐る進んでみた。

途中、数箇所だけ道幅が広くなっているところがあった。

「なるほど、対向車とすれ違う時はここに車を寄せるのね..」

しかし、この電灯もなく、道路の線も引かれてない畑のど真ん中、ぜったい夜は真っ暗に違いない。

「帰りは絶対日が暮れる前に出発しなければ!」

と私はすでに帰る時のことを心配し始めていた。

細くクネクネした道をしばらく進んでいくと、やっと「Wetton」と標識がでてきた。

小さな集落のような村だが、ハイキング客や観光客がよくくるのか、ちゃんと村にも小さな公共の駐車場と公衆トイレもあった。

駐車場を探しながら村を1周してみたが、2-3分出回れるほどこじんまりしていた。

途中、カウントリーパブや、かわいいティールームの看板も見えた。

「洞窟まで遠そうだったら、若者がハイキングしている間、私はここでお茶でも…」

という思いがふと頭をよぎっていた。

 

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Wettonにあるティールームの看板

車を駐車場に止めて「さぁ~、洞窟めざして行くわよ~!」と張り切って歩き出したものの、どこにも「Thor’s Cave」という標識も見当たらず、どっちに進めばいいかさっぱり…。

幸い、ハイキングの格好をした人たちが通りかかったので、「きっとこの人たちも洞窟にいくに違いない」とみて、後をついていった。

村をでると、周りは牧草地帯!

牛や羊がそこら中にいて、その牧場の中をしばらく歩いていった。

牧場を囲っている柵をよじ登って乗り越えるように、足場も作られていた。

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牛がたくさんいる牧草地帯の真ん中を歩いてめざす洞窟へ....
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牧場の囲いはよじ登れるように足場があった。牛の他には羊たちも...。

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牧草地帯をひたすら歩く...

 

牧草地帯の風景に見とれながら20-30分くらい歩いて「ホントにこっちで方向は合ってるのかしら…。洞窟らしきものがなさそうなんだけど…」

「それにあとどれだけ歩けばいいのやら..。やっぱり私だけ村に残ってお茶しておけばよかった..」と不安になってきたころ、家族連れのグループが向こうから歩いてきた。

「Thor’s caveはこの辺にあるかご存知ですか?」と聞いてみた。

「この階段を下りたらすぐそこですよ。」

と教えてくれた。

教えてもらったとおり、洞窟はすぐ階段を下りた先にあった。

「おお~!ネットで見た写真と同じだぁ!中に入ってみようか?」

と言いながら洞窟の入り口までいったが、洞窟に入るには登り坂になっていて、しかもツルツルした岩場になっていた。

洞窟から出てくる人たちは、すべり落ちないように、お尻を地面につけて、滑り台のように降りてきている人もいた。

「うわぁ~、ちょっと危なそう..。」と私はおじ気ずいていたのだが、

「でもせっかく来たからがんばって中まで行こう!」と娘に励まされ、恐る恐るツルツルした岩を登り始めた。

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洞窟の入り口はツルツルの滑りやすい岩場。


 洞窟の中はそれほど広くはなかったが、中から見える木々や丘の景色は最高!

まるで、洞窟の入り口が額縁で、見える景色が風景画のようなアングルだ。

「2時間以内でこんなところに来れるなんて!」

「コロナでホリデーに行けなくても、こういう所に今度からもっと出かけようよ!」

と皆で意見が一致した。

 

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洞窟の中から見える景色は最高!

洞窟から出た後は、その先の森の中を少し歩いて森林浴。

この森の中には幹にコインの刺さった「金のなる木」も!

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洞窟に続く森を散策してると「金のなる木」が!

 

朝家を出発して、お昼も食べずに歩き回っていたため、Wettonの村に戻ってきた頃には皆お腹ペコペコになっていた。

「村のパブでご飯を食べて帰ろう!」

ということになり、この村にある唯一のパブ「The Royal Oak」というパブに入った。

この牧草地帯の真ん中にあるパブにも、コロナウィルス対策が取り入れられていた。

メニューを渡す代わりに、PDFファイルになっているパブのメニューを携帯にダウンロードして見ることになっていた。

「あまりメニューの内容多くないから、黒板にでも書いてくれればいいのに~!」

「その方が見やすいよね…。」

「しかも、田舎で4Gが繋がりにくいのか、3Gになってるからダウンロードに時間が…」

と皆でブツブツいいながらメニューを読んだ。

皆お腹がすいているからか、イライラしてきた。

この村で1軒だけのパブだからか、人が多かったからかはわからなかったが、注文を取りに来てくれるのも、料理がでてくるのも、この日は時間がかかっていた。

私は、あの畑の中の1本道のことを思い出した。

「なんとか暗くなる前に食べ終わって帰路につかねば…!」

幸い空腹だったので料理が出てきた後は、みなペロペロとあっと言う間に食べ終わり、暗くなる前に畑と田舎道を去ることができた。

 

帰りの車の中で、娘と姪っ子たちは「違う景色をみてホリデーみたいで楽しかったね~!」と喜んでいた。

今年はロックダウン生活も長かったため、見慣れた景色と言えば家の中や、いつも行くスーパー、それに後半は通勤路とオフィスだけだった。

「久しぶりに外をこんなに歩いて疲れたけど、たまには全く違う景色を見るのもいいものだなぁ~。」と私も実感しながら運転して帰路についた。