ロックダウン2週目(3月30日~4月5日頃)-新しいライフスタイル
ロックダウンも2週目に入り、新しい生活パターンにも慣れ始めてきた。
いままで朝8時出社だったので、在宅勤務中もシャワーと朝食のあと毎朝8時にノートパソコンをONにし、メールチェックをする事から1日が始まった。
スペイン
この週の月曜日パソコンをONにすると、スペインの代理店の人からメールが届いてた。
スペインでもコロナの感染者が増えてきたため、国がロックダウンすることになり、代理店の事務所も「最短でも4月9日までは閉鎖になります。」というお知らせだった。
「皆さんどうか元気でいてくださいね。」とお互いメッセージを送りあった。
3月8日にマドリッドであったWomen’s Dayの集会にあふれるほど大勢の人たちが集まっていたシーンがフラッシュバックしてきた。
スペインにいる代理店の人たちのことも心配だったが、「今年の初めに予約を入れていた6月出発予定の私たちのホリデーはどうなるのぉ?」ということが頭をよぎった。
イギリスがどん底に暗かった年明けに、青い海と空を見るのを楽しみに友人夫婦と4人でスペインの地中海海岸線にあるコスタ・デルソルに行くことにしていた。
6月までには収束していて欲しいと願うと同時に、心の中では「この状況じゃ、6月は無理かな..」と諦め始めていた。
4人でスカイプミーティングをし、「とにかく航空会社がフライトを飛ばさなければ返金されるだろうから、そのお知らせを待とう」ということになった。
今問い合わせしようと思っても、航空会社も保険会社も4月出発予定だった人たちの問い合わせで手一杯のようで、「出発がこの先1週間以内でない人は後日連絡してください」というメッセージが返ってきた。
お天気は良くなったが…
あんなに青い空が恋しかった1~3月だったが、このロックダウンが始まってからというもの、イギリスは良い天気にみまわれ、先週末にサマータイムが始まったのもあり、日もずいぶん長くなってきた。いつもならこれからどんどん外出する人たちが増える季節だ。
週末には国立公園や観光地は人で賑わい始める頃だが、今年はせっかくお天気がよくてもどこにも行けない…。
「せめて、天気のいい日は庭に出て青い空でも眺めるか!」と思い、時々庭で仕事をすることにした。
庭で仕事をしていると同僚から「How are you? (どうしてる?)」と電話がかかってきた。私が「天気いいけどどこにも行けないね~。」と青空を見上げながら言うと、
「いやぁ、この季節にロックダウンになってよかったと思うよ。これで暗くて寒い時期だったら、家に篭ってる間に鬱になるって!」という返事がかえってきた。
確かに、確かに!
ものは考えようだわ!せっかく天気もよくなったことだしお出掛けはできなくともポジティブ思考でいこう!
お菓子作りと料理する時間がある!
在宅勤務にはなったものの、取引先のヨーロッパの代理店の大半も同じ状況下なので、メールの件数もかなり減ってきた。だいたいのやり取りは午前中で終わることもしばしば。
長距離通勤もなくなったので、いつもより日々の時間に余裕がでてきた。
普段は料理もなかなか手のこんだものを作る時間がなく、「早く作れて片づけが簡単なもの」ばかりだが、時間があると「ケーキでも焼いてみようかな~」などと思うようになってきた。
イギリスのスポンジケーキはパサパサしたのが多く、「日本のしっとりとしたショートケーキが食べたい!」と恋しくなるときがある。
「よ~し!このロックダウン中に、日本にあるような、しっとりとフワフワしたスポンジケーキ作りに挑戦してみよう!」と思い立ってYouTubeを検索してみると、たくさんレシピが出てきた。
その中で私にもできそうなあまり手のこんでないのを選び、何回か挑戦してみるうちに、まずまずのケーキが焼けるようになった。
ちょうど4月1日は息子の誕生日だったので、お誕生日ケーキも焼いてみた。
普段だったら市販のもので済ませるのだが。
娘もケーキ作りが好きなので、一緒にいろんなデコレーションを試してみたりして、久しぶりに一緒に過ごす時間が持てていいなぁ~と思った。
困ったのは、一旦作るとそれを食べなくてはならないことだ!
隔離中は他の人に会う機会がないのでお裾分けもできない。
ホールケーキを焼くと家族4人で食べきるのに時間がかかるため、ケーキが残っている間は毎日のように一切れづつたべてしまうことに…。
4-5回ケーキを焼いたところで、ウェスト周りが気になってきた。
(おそらく原因はケーキだけではないと思うが..)
しばらくケーキ作りは休憩としよう。
小麦粉も手に入りにくいことだし...。
普段家族のメンバーの誕生日には食事にでかけるのだが、今年はどこにも行けない。
ということで、誕生日の息子に「何かたべたいものある?」と聞いた。
「すき焼き!」という返事が返ってきた。
イギリスではすきやき用の薄切り肉は普通のスーパーでは売っていない。
ということで、すきやきを作る時は牛肉のかたまりを買ってきて自分でそれを薄切りにしているが、やたらと時間がかかる。
お肉屋さんが使うようなスライサーを持っていた時もあったが、使った後は分解して洗わなければならず、使う頻度からして割に合わなかったので売ってしまった。
仕事をしている時は「すきやき?手間かかるからまたいつかね。」という感じで逃げていたが、今回は「いいよ~!」と快くリクエストを引き受けた。
やっぱり時間に余裕があるっていいことだ!
Get connected! – 離れていても繋がっていよう!
ロックダウンが始まってからというものTVではいろんな人がビデオメッセージを送ったり、会いにいけなくなったお年寄りの親族とビデオコールで話している様子が紹介されたりしている。「ロックダウン中会えなくてもスカイプ, Zoom, フェイスタイム等で、愛する家族や友人と繋がっていよう! - Get connected!」とTVではビデオコールを促進している。
家に篭っている間に寂しさから鬱になる人が増えるのではという懸念からというのもあるようだ。このロックダウンがテクノロジーの発達した時代に起きたのは不幸中の幸いだと思った。
「そうだ!私も日本の両親や妹家族ともっと頻繁にスカイプコールできるようになったんだ!」と気がついた。
普段働いている時は、夏場でも8時間の時差があるため、会社から帰ってきたら日本は真夜中なのでコールするには遅すぎる。
なるべく週末にビデオコールしようと思っているが、朝ジムに行ったり買い物に行ったりして家に帰ってくるのがUKのお昼すぎになってしまうと日本の親は寝る時間に近づくので遅すぎる。
ということで今まで時差を理由になかなか頻繁にビデオコールをしていなかった。
が、このロックダウン中はずっと家にいるのでいつでもオッケーだ。
ちょうどUKの時間のお昼なら、私はランチタイム中で、日本は夜の8時なので親も寝る前だ。
兵庫に住んでいる両親と、千葉に住んでいる妹に連絡して、週1~2回スカイプのグループコールを提案してみた。普段、妹も仕事、家事、ヨガ教室通いと忙しいので、3家族でコールしたことはなかったが、妹も今月から在宅勤務になっているので「やろう!やろう!」と返事がかえってきた。
初めて3家族で一緒にスカイプコールしてみた。
特に母は一度に娘2人とその家族に会えて嬉しそうだった。
たわいもない話を一緒にしているとイギリス、兵庫県、千葉県の距離感がまったく感じられず、すぐ近くに座って話しているようだった。
「これいいね~。ロックダウン中は定期的にやろう!」ということになり、お互いの安否の確認も兼ねて週に2回スカイプで会うことになった。
それともう1つ気がついたのは、今まで1年に1~2回くらいしか連絡を取ってなかった友達ともこのロックダウンが始まってから頻繁にLine やWhatsAppのやりとりが増えたことだ。
「どうしてる~?」というようなちょっとしたメッセージも時間があると送りやすい。家に篭ることにはなったけど、思いがけず時間ができたおかげと、スカイプやSMSのおかげで今までより家族や友人との繋がりが密になった。
もしこのようなテクノロジーのなかった時代に同じような隔離状態になっていたら?と思うとどうなっていたか想像がつかない…。
みんなフィットネスしてる?
最近ネットで読んだ記事だと確かUKはヨーロッパの中で3番目に肥満の(BMI値が高い)人が多い国のはずだ。
しかし!
このロックダウンが始まってからというもの、普段より多くの人達が運動してるのでは?と思い始めた。
先ず学校が休校になって家に篭っている子供たちのためにJoe Wicks(ジョー・ウィックス)というボディーコーチのお兄さんが、ロックダウン第一日目から毎日朝9時にYouTubeで「P.E. with Joe」(ジョーと一緒に体育の時間?)という番組を発信し始めて、これが大ヒットしてるとニュースで紹介された。
子供向けに家で簡単にできる運動を紹介してるのだが、お年寄りにも人気がでているとのことでいろんな世代からのヒット数が増加中らしい。
また朝の番組ではDiana Moran(ダイアナ・モーラン)という緑のレオタードを着た感じのいい80歳くらいのおばあさんが、自宅のサンルームから、お年寄りでも簡単にできる運動を視聴者に紹介し始めた。
夫によると、このダイアナさんは元女優で80年代は「Green Goddess」(緑の女神)と呼ばれてフィットネスのビデオを出していたそうだ。当時も緑のレオタードがトレードマークだったらしい。
このロックダウンで家に篭って運動不足になっているシニアの国民のためにカムバックしたようだ。
また「自宅でこんなフィットネスをしてまーす!」というようなYouTubeのビデオが数多くTVでも紹介されはじめた。
TVだけではなく通りを歩いていても、ウォーキングやジョギングをしてる人があちこちに..。
「1日1回、運動のための外出」は許されているので、みなこの1回の外出に情熱をかけてるのかしら? と思うほどだ。
何を隠そう私の夫も普段自転車には乗らない人だが、このロックダウンが始まって早速サイクリング用の自転車をオンラインで注文したところだ。
また夫が筋トレのためにダンベルをネットで注文しようしたら、なんとすでにどこも売りきれだった! 我が家には私と息子が共同で使っている5kgのダンベルが2つあるが、夫がもっと重いのが欲しいと言い出しネットで探し始めたのだが、どこも「Not available (在庫なし)」。
「ひょっとして国民総出で自宅で出筋トレをやってるのぉ?」と思うほどだ。
「ロックダウンが解除されたら、筋肉モリモリのフィットした人たちがたくさん家からでてくるかも!ふふふ…。」と私は密かに期待し始めた。
そしてUKの肥満ランキングが下がることも期待したい。
Zoomクイズ大会スタート!
この週の半ばになるころ大学生の姪っ子(義妹の娘)から親族全員宛のグループWhatsAppメッセージが届いた。
「このロックダウン中は皆に会えないけど、Zoomを使えば一度に全員を画面に出せるから、これを使ってクイズ大会しまんか? みんな賛成だったら第1回目は私がクイズを出題します~。」という提案だった。
なんていういいアイデア!
親族と画面上で会えるのもいいアイデアだが、クイズというエンターテイメントができるの が更にグッド! この毎日同じような日が繰り返されている生活の中、今の私たちに必要なものはエンターテイメントだ!!
全員から「I’m in! (参加するよ!)」と返事がきて、これから毎週金曜日の夜はクイズ大会をすることになった。
チーム分けは:
1.我が家(私、息子、娘)
2.夫と義母(ちょうど夫が義母宅へ会いに行く日とクイズの日が同じ)
3.義妹と義妹の次女
4.義妹の夫と3番目の娘
5.義父と義妹の長女
6.義弟夫婦
7.義弟の娘夫婦
8.私と夫の友人(1人)
の8チームになった。
金曜日、8時になる前に夕飯の後片付けを終了し、飲み物やつまみを用意してPCの前に落ち着いた。 「イベントがあるって生活にハリがでていいわ~」という事に気がついた。
クイズが始まると、結構みな競争心がでてきて楽しめた。
クイズだけでなく、画面でみなに会えて元気な様子が伝わってくるのもいい。
第一回目は30題の質問が出題されて、なんと私のチームが優勝した。
「イエーイ!」と喜んでいたら、
「じゃあ、来週は優勝したチームが出題ね!」ということになった…。
よーし、クイズの問題考えますとも! 時間はたっぷりあることだし。
バーチャル競馬
毎年この時期にGrand National(グランドナショナル)という有名な競馬の大会がリバプールの近くにあるAintree Racecourse(エイントリー競馬場)という所で開催される。
この大会は1839年に始まった伝統的なレースで、毎回40頭近くの馬が出場し、30個のフェンスがある約6.9kmのコースを一斉に走る。
垣根でできた高いフェンスを越えられなくて怪我をしたり、かわいそうな事に死に至ってしまう馬も毎年何頭かでている。
毎年行われる主要な催し物の一つで、競馬ファンでない人たちもTVで観戦したり、どの馬が勝つかを賭けたりして楽しんでいるイベントである。
私も競馬ファンではないが、毎年夫が「どの馬が勝つか賭けてみる?」と言ってくるので、40頭の中から目を惹く名前を選んで小銭を賭けていた。残念ながら大穴を当てたことは今まで1度もないのだが…。
毎年行われてていたこのレースも、今年はロックダウン中なので漏れなく中止となった。
ところが!
このグランドナショナルの「バーチャルレース」がTVで放映されるというではないか!
「え?バーチャルレースっていったいどういうこと?」
私はよく意味がわからなかった。
「コンピューターで生成されたレースってことだよ」
と夫が教えてくれたが、いまいちイメージがわかなかった。
このバーチャルレースに登場する馬の情報と賭けの倍率(オッズ)がインターネットで公表された。バーチャルだが、いつもの通り馬を選んで賭けられることになっていて、その売り上げ金は全てコロナと戦ってくれているNHSに寄付されるとのことだった。
バーチャルレースは、元々実際のレースが行われる予定だった4月4日の17:15pmから放映され、私も馬を選んで2ポンド賭けたあと、TVに見入った。
「コンピューターで生成された」と聞いていたので、ウソっぽいイメージ画像がでてくるのかと思っていたら、なんとまるで本当のレースを見ているかと錯覚してしまうくらいリアルでビックリ!
恐らくレースの最中にTVをつけて、この画像を目にしたら、絶対本当のレースだと思ってしまうだろう。
それにしても、レースの中止が決まった3月中旬から2週間半でこのような大掛かりなバーチャルイベントを作ってしまうなんてすごいなぁと感心してしまった。
何もかもイベントが中止になっているこの時期に、たとえバーチャルでも決行できたおかげで、多くの人が楽しめたと思う。
私の選んだ馬はもちろん負けてしまった。
バーチャルな馬にまで裏切られてしまうとは…。
エリザベス女王のスピーチと首相の入院
コロナによるUKの死亡者数が毎日のように500人~1000人単位で増えていったこの週の終わりにエリザベス女王からのスピーチが放映された。
エリザベス女王の国民に向けたスピーチは、1年に1度クリスマスの日に行われるくらいだ。
この異例のスピーチは、ちょうどコロナの感染者数がピークに達しようとしている時で国民が「このままいくとどうなってしまうの?」と不安になっているときに放映されたので、とてもタイムリーだなと思った。
また国の長であるだけでなく、自らも戦争やその他の困難な時代を乗り越えてきた経験のあるエリザベス女王の言葉には重みがあった。
主なスピーチの内容は:
- 国民のみんさんが今していることに感謝しています-病院で働いている人も、その他のエッセンシャルワーカーの人も、また家に篭っている人も
- みんなで力を合わせてウィルスと戦いましょう
- 今私たちが今していることを誇りに思いましょう
- NHSに感謝するために拍手したり、子供たちが虹の絵を窓に飾ったりしていることで国民のみなさんが一体になっていることはすばらい
- 自己隔離は時にはとても寂しいことだということはよく理解できます。
- 必ずよくなる日がやってきて、今離れてる人たちとまた会える日がやってきます
- 最後にもう一度、ありがとう
といった感じでとても励みになると共に、国民に一体感をもたらしたと思う。
ところが…
このスピーチで国民が勇気付けられたすぐ後に、今度はボリス首相が入院したとのニュース速報が流れてきた。
先週、保健相のハンコック氏と首相がコロナウィルスに感染したというニュースが流れてきたあと、ハンコック氏はすぐに回復して復帰していたので、首相も同じように軽い症状なのかと思っていたが、この突然の入院したというニュースにビックリした。
今回のコロナではNHSの機能崩壊を防ぐため、よっぽど呼吸困難にならないと入院できないということを皆知っている。
コロナによる死亡者が増え続けているこの時期に、もし首相に何か起きたら…?
と不安を感じた人が多かったと思う。
私は、妊娠中の首相のフィアンセであるキャリー・シモンズさんの事も心配だった。
「どうか何事も起こりませんように…。」
この週UKのコロナによる死亡者数の合計は2043人⇒5865人*と1週間で3822人も増加。
(*coronavirus.data.gov.ukより)